2021年活動報告

2021年活動報告

2021年は前年から引き続き、コロナ・パンデミックの影響を受け、通常の活動を変更せざるを得ない状況にありました。そのような中でも政権交代後のアフガニスタン、さらにアンゴラ、タジキスタン、ウズベキスタン、カンボジアへの援助活動を行うことができ安堵すると同時に、現地の医療環境が劇的に悪化し、人々がさらなる支援を必要としている現実に直面しています。また、ドイツ国際平和村施設内に手術室を備えたメディカル・リハビリセンターが開設され、施設内にてボランティア医師による手術が行われるようになりました。以下に、2021年のドイツ国際平和村の様々な分野における活動を報告します。

子どもたちに関する活動:

2020年に引き続き、新型コロナウイルスの防疫措置による規制はありましたが、アフガニスタンとアンゴラへはチャーター機を使用しての援助飛行を実施することができました。アフガニスタンでは、2021年夏に誰も予想しない速度で政権交代がありました。将来への不安を抱え、国外へ脱出しようとする人々で溢れるカブール空港の様子はメディアを通し、世界中に流れました。まさにその当時、ドイツ国際平和村のスタッフが、現地パートナー団体とともに、ドイツで治療を受ける予定の子どもたちと面会を行っていました。政権交代で現地が一時期混乱していたので、通常通りの面会が行えず、8月末に予定されていた援助飛行を延期せざるを得なくなりました。しかし、この延期した援助飛行は11月に実施することができ、27人のケガや病気を抱えた子どもたちをドイツへ連れてくることができました。12月には、現地パートナー団体と協力し、2000箱の食糧援助物資をアフガニスタンの人々へ配布することができました。

2021年11月、アンゴラの子どもたちとの面会のために、コロナ・パンデミック発生以来初めて、ドイツ国際平和村のスタッフがアンゴラに滞在しました。現地では、貧富の差がさらに広がり、コロナ・パンデミックの影響で医療供給も後退していることを感じました。以前は現地で治療ができた症状も、現在は行うことができない状態だと現地パートナースタッフは話します。

タジキスタン、ウズベキスタンからは路線便を利用し、子どもたちを治療のためドイツに受け入れることができ、ガンビア、カンボジア、キルギスへは治療を終えた子どもたちが帰国できました。これらの医療援助活動は現地パートナー団体の協力のもと、実行できました。
2021年には、アフガニスタンから27人、アンゴラから69名、タジキスタンから5名、ウズベキスタンから21人、合計で4か国から122人の子どもたちをドイツへ受け入れました。
2021年12月末の時点で、ドイツ国際平和村は、4カ国の子どもたち115人を受け入れていました。

子どもたちの治療:

子どもたちに治療援助を提供する活動は、2020年に発生したコロナ・パンデミックにより劇的に困難になりました。2021年は前年より状況が改善されたため、新規の治療受入れが再開されました。コロナ・パンデミックの影響は今後も続くと予想されるため、子どもたちの入院ベット確保はコロナ感染者の入院状況により変化すると考えています。そのような状況の中、2021年9月にはスイスの病院で子どもの治療を行うことができ、この病院と2022年内の協力について協議しました。また、隣国オーストリアの病院からも治療提供を受けることができました。大変な状況ですが、それでもなお、引き続き治療をしてくれる協力病院に対し、一層ありがたく思っています。

2021年、合計123件の治療提供がありました。(2020年は252件)

ドイツ国際平和村では、1階に手術室を備えたメディカル・リハビリセンターの建設が終わりました。2021年7月には一人目の日帰り手術をこの建物内で実施しました。そして、2021年12月末までに合計13件の手術をボランティア医師が行いました。この手術室では、瘢痕拘縮の治療、固定器具やメタル除去などが行われています。病院での入院手術が困難な今、この手術室で病院に入院することなく、治療を進められることは、子どもたちにとっても、病院にとっても負担を大きく軽減させています。将来的には、今まで、ドイツで治療を提供できなかった症状の子どもたちへも新たにこの手術室での治療を提供できることになります。

登録ボランティア:

寄付金で成り立っているドイツ国際平和村にとって、多くのボランティアによる協力は、活動を続けていく上で、大変重要です。様々な部署、場面で活動を支えてくれています。ドイツ全土で200~300名の登録ボランティアの皆さんが、ドイツ各地の支援サークルに参加したり、個人で取り組みながら、ドイツ国際平和村のために積極的に活動しています。しかしながら、コロナ・パンデミックにより、その活動も制限を受けました。例えば、ドイツ各地の協力病院における付き添いボランティア活動は、面会規制により通常通りの訪問は困難です。また、オーバーハウゼン市の子どもたちの施設でも、外部との接触を極力制限したため、登録ボランティアには自宅待機をお願いしなければなりませんでした。

現地プロジェクト活動:

現地プロジェクト活動の目的は、家族のいる母国で子どもたちが適切な治療を受けられるようになることです。現在、母国で治療を受けることができない子どもたちは、家族と離れドイツで治療を受けていますが、ドイツと家族を繋げる大事な役割をそれぞれの国の現地パートナースタッフが担っています。現地プロジェクト活動の最終目標は、現地の人々が自分たちの力で必要な活動を続けて行けるようにドイツ国際平和村が支援することです。

ここからは各国の現地プロジェクト活動を紹介します。
各国について詳しくはこちらのサイトに掲載しています。支援国A-Z – ドイツ国際平和村 (friedensdorf.de)

コロナ・パンデミックにより、世界の多くの地域で貧困が加速し、人々の生活環境が劣悪化しました。基礎食品や衛生用品といった生活必需品を手にすることができていません。この状況の改善へ少しでも貢献できるよう、食糧支援活動を実施しました。また、子どもたちが母国の家族のもとで手術を受けられるように、各国での手術プロジェクトも進めました。

2021年、アフガニスタンへは、コロナ・パンデミック禍にも関わらず、医療物資を2度現地へ届けることができました。医療物資の中には、かつてドイツ国際平和村で治療を受けた子どもたちが引き続き必要としている医薬品も含まれています。2021年12月には、2000家族分の食糧援助物資を現地で配布しました。2022年も引き続き、食糧援助物資を届ける予定です。

アンゴラへかつての子どもたちへの医薬品を含んだ医療物資援助を2度行いました。

アルメニアへは、以前、ドイツで治療援助を受け、帰国した子どもたちの中で、引き続き投薬治療が必要な子どもたちのための医薬品を、2021年も届けることができました。また、ドイツ国際平和村が資金援助し、アルメニアの子どもたち12人が手術を受けることができました。

ガンビアへ医療物資援助を行いました。

ジョージアへ、現地にいるかつての子どもたちに必要な医薬品を届けました。

ドイツ国際平和村は、カンボジアのごみ山で生活の糧を得て暮らしている家族の子どもたちへ様々な社会プロジェクト活動を提供しています。この活動を通して子どもたちが希望ある未来の展望を描けるように努めています。一つはプノンペン市での幼稚園プロジェクトです。2021年、コロナ・パンデミックの影響で、プノンペンのゴミ山から生活の糧を得ている人々の状況は悪化しました。残念ながら、幼稚園は、防疫措置のため一時休園しなければなりませんでした。バッタンバン市では、コロナ感染防止のため、厳しい規制が発令され、ゴミ山で糧を得てもそれを売ることができず、多くの家族が困窮に陥りました。そのため、ドイツ国際平和村は、資金援助をし、カンボジアの人々へ食糧援助物資や医療物資を届けました。さらに、カンボジア国内には39軒目となる基礎健康診療所が完成し、さらに多くの人々に基礎医療を提供できるようになりました。

2021年5月、パレスチナでの紛争が激化しました。ドイツ国際平和村は病院等で必要とされている緊急医療キットをパレスチナへ送りました。

タジキスタンでは、障がいを持つ子どもたちへの移動理学療法プロジェクト「リハビリ at Home」を推進しました。このプロジェクトは2019年に始まりましたが、コロナ・パンデミック禍では進めることができていませんでした。2021年、規制緩和の時期に、再度進めています。また、ドイツ国際平和村は、タジキスタンの困窮している家族が厳しい冬を越せるように支援物資として、人々へ基礎食品と衛生用品を届けました。過去数年は、チョコレートや保存食などタジキスタンの人々の手に入りにくいものも詰めてもらうようにお願いしていましたが、2021は、飢餓に苦しんでいる人々のために、特に基礎食品をお願いしました。ドイツ市民の協力によって、2760箱(45トン)をタジキスタンへ届け、現地パートナー団体が分配しました。また、かつてドイツで治療を受けた子どもたちへの医薬品も現地へ届けました。

ウズベキスタンでは、現地で4つの手術プロジェクトを進めました。以下に、各プロジェクトで支援した子どもたちの数を記載します。

口唇口蓋裂症治療プロジェクト(2003年にプロジェクト開始):96人
整形外科プロジェクト(2008年にプロジェクト開始 ):45人
形成外科手術プロジェクト(2011年にプロジェクト開始):17人
心臓疾患手術プロジェクト(2015年にプロジェクト開始 ):105人(うち3人分の手術費用全てをまかなうことができました。102人の子どもたちには、必要な医療技術を提供しました。)

援助物資輸送:

ドイツ国際平和村が支援を行っている国々では医療供給が不十分であることに加え、、基礎的なものが足りていないことも問題の一つです。そのため、各活動国へ援助物資も定期的に届けています。その中には、医療援助物資や医療機器、医薬品、整形用具、衣料、それに衛生用品など、現地で緊急に必要とされているものが援助物資に含まれています。

1994年から行っているパケットアクションを通して、2021年はタジキスタンへ2760箱の支援物資を届けることができました。

アフガニスタンでは、2021年12月にアフガニスタン現地パートナー団体からの要請で、食糧援助を行いました。2021年8月の政権交代後、多くの国民の生活が困窮しています。そのため、1箱あたり120kgとなる2000箱の食糧物資を準備しました。食糧物資の配布は、現地パートナー団体と協力し、カブールの様々な地区で行われました。その際、ドイツ国際平和村の現地プロジェクト活動「マラストゥーン―平和のための共同体」にも配布をすることができました。「マラストゥーン―平和のための共同体」では、シングルマザーや障がいをもった人々、それに身寄りのない人々のために「家」を提供し、3年間の訓練後に労働の機会も提供しています。ここに住むシングルマザーの多くは、紛争で夫を亡くしています。2021年8月以降、アフガニスタンの状況が変化し、彼女たちが仕事をすることは困難になりました。そのため、食料や必要なものを入手することがほとんど出来ませんでした。この度、ドイツ国際平和村の物資援助活動により食糧を受け取り、マラストゥーンの人々からは、喜びと安堵の様子が見られました。

ドイツ国際平和村共同基金:

ドイツ国際平和村共同基金は、ドイツ国際平和村の活動を長期的に安定したものにすることを目的として2001年に設立され、カンボジアにおける基礎健康診療所建設等の現地プロジェクトや援助飛行の際のチャーター機代などの費用が、この基金の使用途になっています。

2021年は、カンボジアでの39軒目の基礎健康診療所建設、幼稚園プロジェクトとサーカスプロジェクトを支援しました。

ドイツ国際平和村・平和教育部門:

平和教育部門でも、2020年に続き、2021年もコロナ・パンデミックの影響を大きく受けました。

ファミリー・生涯学習講座の各種セミナーは、2021年は予定していた1615セミナー時間のうち、456時間しか開催できませんでしたが、48のプログラムに合計586名が参加しました。ドイツ国際平和村・平和教育部門の開催する「出会いの場」におけるプログラムには、衛生環境を整えた上で11のグループが参加し、対面での活動紹介を開催できました。その他、19グループはオンラインによるセミナーへ参加しました。その際、「出会いの場」における平和教育プログラムの基礎コンセプトを「その場にいなくても」伝えられるという方法を導入しました。

2021年2月から、Dinslaken市にあるVoswinkelshof博物館でドイツ国際平和村の活動や歴史の展示会「Menschlichkeit grenzenlos (er)leben(境界線なきヒューマニズムへの招待)」が長期開催されました。また、2021年6月にはドイツ国際平和村教育部門初の新聞が発行され、人々が平和について考えるきっかけとなりました。

2021年8月6日、オーバーハウゼン市における広島長崎原爆被害者追悼式へ参加しています。

日本からの支援:

ドイツ国際平和村と日本との繋がりは、90年代中ばに始まり、今も続いています。コロナ・パンデミックが続く現在も、テレビ「ウルルン滞在記」をきっかけにドイツ国際平和村の活動が知られるようになった日本からご寄付が届いています。ただ、2021年は、コロナ・パンデミックによる規制のため、ドイツ入りした住み込みボランティアの数は減少しています。入国規制が厳しい状況下でも、数名が渡独し、活動に参加しました。

 

2021年、日本全般を担当する部署では、引き続きオンラインでの活動を続け、活動説明会を定期的に行いました。講演会は、ドイツ国際平和村大使の東ちづるさんや日本の支援サークルの皆さん、大学や小中学校の皆さん、旅行会社や元ボランティアスタッフたちとの協力のもと行うことができました。

2021年は元ボランティアスタッフの発案で、あけび書房出版「平和村で働いた ドイツで出会った世界の子どもたち」を発行することができました。売り上げの一部がドイツ国際平和村の寄付となります。

2002年以降、『通販生活』を発行しているカタログハウス社からも多大な支援が届いています。カタログ雑誌『通販生活』の中で、定期的にドイツ国際平和村のことを紹介する記事を掲載してくれていますが、2021年も変わらず掲載しています。

2021年も引き続き、支援サークルの皆さんが主体となり、ドイツ国際平和村写真展を日本各地で展示することができました。また、それぞれの支援サークルの活動もオンラインや対面を利用し、2021年も継続して活動していただいています。

2021年12月30日、NHK BS1スペシャルにおいてドイツ国際平和村のドキュメンタリー番組が放映されした。

資金に関して:

ドイツ国際平和村は、2021年も寄付金標章を受け取ることができました。この標章は、寄付金が正しく使用されているかを監査している機関である「Deutschen Zentralinstituts für soziale Fragen(DZI)」から取得するものです。Siegel(寄付金標章)は、寄付金で成り立っている団体の透明性と信用性を表す指標となっています。今回の標章取得にあたって2019年の収支表が監査されました。

2021年、一般寄付項目にあたる寄付は、6,3%減少しました。2020年に比べて28万ユーロの減少です。過料の項目でも約3万ユーロの減少がみられました。オンライン寄付も2020年に比べ、18%減少しました。

例年同様、2022年5月の会員総会後に、2021年の収支表とその報告について、ホームページ(ドイツ語)に報告する予定です。

最後に:
紛争や危機的状況にある子どもたちへの援助活動は、多くの方々の連帯と協力によって可能です。2021年、援助活動の重要性が多くの方々によって意識されていることをあらためて認識することができました。人々からの連帯と協力によって、現状に合った形で、そして必要な場合に新たな手段をとって活動を続けていくことができました。このコロナ危機を乗り越えるために、様々な形でドイツ国際平和村にご支援、ご協力をいただいた全ての皆様に心より感謝申し上げます。2022年も、多くの方々から引き続きご支援いただけることを願っています。

ドイツ国際平和村の支援は、多くの国で必要とされています。2022年も現地で支援を待っている子どもたちへ確実に援助を届けられるように活動を続けていきます。

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