一人ひとりが負っている社会への責任
― 反戦の日に際し
ドイツ国際平和村でチャリティウォーク&ラン ―
1939年9月1日、ドイツ軍がポーランドに侵攻し、第2次世界大戦が始まりました。
今からちょうど80年前のことです。ドイツでは、毎年9月1日を反戦の日としていて、当時のナチズムの思想を問い、学び、原因を思考する機会となっています。どのようにこのような惨事が起こったのかを理解するためには、その当時の人々や思想、行動、その時の状況を正確に知る必要があると考えます。
ドイツでは、戦争という過去に対して、「過去を振り返る」と言うと、よく誤解を受け、扇動的な意味に聞こえることもあります。戦争中に起こした惨事に、戦後世代の人々がどのように捉えるべきかが議論の焦点になっているからです。ドイツの右翼の政党は、「過去を学ぶこと」が、戦後世代の人たちが戦時中にナチスが犯した罪をいまだ「負わされている」ことになると批判しています。しかし、「過去を学ぶ」ということは、罪を感じることではなく、出身や宗教に関係なく一人ひとりが現在の社会に対して責任を持つことを学ぶことなのです。ただ、そのことが無視され、責任と罪の意識の違いが薄れているのが現実です。
また、最近では、犯罪行為とそれに対する罪に、有罪者の出身地が結びついて捉えられてしまっていることがあります。
7月、ある人物が犯した驚愕的な事件を、メディアは一人の人間が犯した犯罪ではなく、「エリトリア人が犯した犯罪」として出身地を大きく取り上げました。民衆の偏見や別の民族や集団への敵視の土台となっていく流れを今回目の当たりにしました。こうした罪のあてつけが、差別を生み、過去の歴史を学ばずに、犯罪を繰り返すきっかけとなってしまうのです。
ドイツ国際平和村は設立して52年が経ちました。活動を続ける中で、「平和」という概念には様々な意味があることを確信しています。平和とは、民主的な価値観、寛容さ、社会的平等、目的に応じた適切なコミュニケーションを確保し続ける空間でなければなりません。そのために、「一人ひとりが責任を持ち行動すること」が必要になります。
ナチスの時代やその他の戦争を通して私たち人類は、他者を軽蔑し、悲惨な惨事を行うという経験をしました。ただ、このことから私たちは学ぶことができます。何が起きたか、どうして、起きたのか。明日の未来のために、はっきりとした考え方を持ち、それがどのような影響力を持つかを理解できるようにならなればなりません。そのためにも、一人ひとりが、自分にできることで行動を起こしていくことが大切です。
ドイツ国際平和村では、この反戦の日に際し、今年もチャリティ・ウォーク&ランを開催しました。当日は約120人の参加者が集まりました。15時にチャリティーウォーク&ランがスタートすると、手作りした色とりどりの平和の鳩やピースシンボル、それにハートのプラカートを持ったドイツ国際平和村の子どもたちが、歩き始めました。ドイツ国際平和村の子どもたちに続いて、一般の参加者たちも5キロもしくは10キロのコースをスタートしました。
ドイツ国際平和村のチャリティ・ウォーク&ランでは、現在ドイツへ受け入れている子どもたちも含め、危機的状況にある国や紛争の起きている国々の子どもたちに想いを寄せ、ドイツ国際平和村の活動を支えることが目的です。現在8カ国の子どもたちが、治療のため、ドイツ国際平和村で生活しています。子どもたちはドイツ各地にある協力病院で治療を受け、治療と治療の間にドイツ国際平和村の施設に滞在しています。このチャリティウォーク&ランで集まったご寄付は、子どもたちのために大切に使わせていただきます。
当日のウォークまたはランに参加、またはスポンサーになることで、多くの方からのご協力がありました。スポンサーまたはランナーとして参加してくださった皆さん、会場にお越しくださった皆さんやボランティアとして活動してくださった皆さん、平素からドイツ国際平和村の活動に日本・ドイツからご協力・ご支援くださっている皆さんに、心よりお礼申し上げます。
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