イラク北部から子どもたちが渡独

ドイツでの医療提供の可能性

10月22日(土)、イラク北部のクルド人自治区から9人の子どもたちが、デュッセルドルフ空港に到着しました。ドイツでの治療を受けるため、またはさらなる診断のため、渡独しました。そして、9人のうち3人が、子どもたちに付き添ってきたイラク北部で活動する現地パートナー団体「Barzani Charity Foundation」のスタッフとともに、11月4日(金)、帰国することができました。3人のうちの1人はマーティンという男の子です。

約2週間前、イラク北部の都市エルビルにて、マーティンを含む子どもたちは涙ながらに家族と別れました。2022年3月、ドイツ国際平和村スタッフが初めてこの地域を訪れ、ドイツでの医療援助の可能性を探るため、子どもたちと面会しました。そして、泌尿器系疾患、やけど、整形外科関連の症状を抱えた9人の子どもたちの渡独が予定されました。そのうちの3人は、現地の診察だけではドイツでの治療の可能性を決定しづらく、さらなる診断の目的で渡独しました。マーティンはそのうちの1人です。この度、ドイツの医師によって、現在のところ、クルド人自治区での彼の疾患の治療経過が良く、さらなる手術の必要性はないと診断があり、帰国することになりました。

ドイツ国際平和村がクルド人自治区から子どもたちを受け入れたのは初めてです。特に子どもたち、そして家族や現地パートナーにとって、新たな経験でした。子どもたちのドイツへの飛行には、現地パートナー団体「Barzani Charity Foundation」内の保健医療担当のアガ医師が付き添いました。アガ医師は2週間、ドイツに滞在し、ドイツ国際平和村の本部事務所や子どもたちの施設にて、時間を過ごしました。そして、11月4日(金)に、3人の子どもたちに付き添い、エルビルに戻りました。エルビルで、アガ医師は、各家族と面談をし、ドイツ滞在中のことや、ドイツに残った子どもたちの治療予定について、話をしました。互いの信頼関係を構築するために重要なことです。

子どもたちとって、特にドイツ滞在が始まって数日間は慣れないことばかりでした。「ドイツ国際平和村が新たに受け入れる子どもたちは、基本的に、以前の援助飛行でドイツに来て既にドイツでの滞在や治療を経験している同郷の子どもたちとここで出会います。そして、安心感を得ることができます。今回のクルド人自治区から来た子どもたちには、そのような子どもたちがいないため、不安が大きかったことでしょう。アガ医師がこの子どもたちにとっても大きな支えとなりました。」とドイツ国際平和村代表、ビルギット・シュティフターが言います。平和村施設で慣れるのに時間がかかる子どももいますが、ラシードのように、すぐに慣れる子どももいます。彼は、シリア内戦によって難民となり、家族とクルディスタンの難民キャンプで生活していました。ドイツ国際平和村スタッフ、クラウディア・ペップミュラーは、「彼はここでの生活が過ごしやすいのでしょう。食事がおいしくて大好きだと言っていました。」と報告します。

この度、アガ医師と3人の子どもたちは帰国しましたが、6人の子どもたちにとって、これからドイツでの治療の日々が始まります。紛争に翻弄されてきた彼らの母国では、彼らに必要な専門的な治療が不可能でした。ドイツ国際平和村スタッフが3月に現地入りした際、クルド人自治区での基礎医療は確認できましたが、後続治療が困難であることを確認しました。また、かなりの数の難民が発生していることにより、医療供給に問題が生じています。クルド人自治区住民、約600万人のうち、約100万人が難民です。現地の人々、特に子どもたちを取り巻く医療状況が少しでも良くなるよう、ドイツ国際平和村は今後も可能な支援を続けていきます。

アガ医師とこの度帰国した3人の子どもたち

 

 

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