シルクロードの国 タジキスタン

「シルクロードの国 タジキスタン」 25年続くドイツ国際平和村の支援活動

2019年6月、ドイツ国際平和村スタッフ、ケビン・ダールブルフ、クラウディア・ペップミュラー、エファ・カムフーバーは、タジキスタンへ向かいました。今回の目的は、タジキスタンの現地パートナー団体が行う現地プロジェクト活動の視察と、8月に治療のために渡独する子どもたちとの面会です。また今回の滞在中、ドイツ国際平和村が2016年に資金提供して建設された理学療法施設も視察しました。ここは、身体障がいのある子どもが治療やリハビリを受けることができる施設です。

タジキスタンは、アフガニスタン、中国、キルギス、ウズベキスタンに囲まれた中央アジア最貧地域に属する山岳国家です。1991年ソビエト連邦が崩壊し、独立を宣言しましたが、その後タジキスタンは深刻な危機に陥ります。

幼児死亡率 (5歳以下) 1,000人中34名
人間開発指数 0,627 (188国中129位)
開業医(住民1000人に対し) 1,7人
病床数(住民1000人に対し) 4,8床
公共の医療投資 国内総生産中 7%
1日3ドル以下で生活している人々の割合 30%

経済は崩壊し、国土は内戦によって大きなダメージを受けました。内戦は1997年に終結しましたが、国民は依然として内戦が残した爪痕に苦しんでいます。

全国民約900万人のうち、そのほとんどが農村地帯に住み、農業を営んでいます。しかし、国土の大部分が山岳地帯であるため、農業に適した土地は国土の約7%しかありません。その7%の土地もほとんどが高地なので、羊などの畜産と綿花栽培が主です。そのため、食糧の大部分は輸入頼りで、価格も相応に高くなります。

タジキスタンの医療事情

写真:クリャーブでの子どもたちとの面会にて
アジザ・ホーン・カシモフ医師

ソ連崩壊とその後の内戦は、タジキスタンの医療に大きなダメージを与えました。ソ連崩壊前、この国の医療インフラは整っていましたが、内戦でその大部分は瓦礫の山と化しました。さらに、ソ連時代は医療費が無料でしたが、その制度も廃止されました。2019年8月、アフガニスタン、中央アジア、コーカサス地方への援助飛行活動の際、タジキスタンの現地パートナー団体で働くアジザ・ホーン・カシモフ医師がタジキスタンの医療事情についてこのように報告してくれました。

「タジキスタンの大きな問題は、医師不足です。私は„Dechkadai Sulh Derewnja Mira(平和村)“で働く前、神経科医として総合病院で働いていました。そこの給料は、ユーロに換算すると月70ユーロでした。この国の医師の給料はとても少なく、彼らの多くが家族を養うため、別の仕事もしなければなりません。当時の私の医師仲間たちの多くは、外国、特にロシアへ行ってしまいました。さらに、国内のあちこちで薬や包帯などの医薬品が不足していますし、医療機器の老朽化が進んでいます。そのため、首都ドゥシャンベでしか受けることができない処置や手術が多くあります。また、タジキスタンでは、医療処置、手術、宿泊など病院でかかる全ての費用を、本人が自費で賄わなければなりません。食事も自身で用意し、家族が病人の介抱をします。収入の少ない家庭にとって―たいていのタジキスタン国民が当てはまりますが―、この全てを支払うことは不可能です。例えば、血液像検査だけでも20ユーロかかります。それゆえ、多くのタジキスタン人は病気になっても、病院へ行かないのです。」

 

このような医療事情のため、ドイツ国際平和村の支援は現地の人々にとって必要不可欠です。1994年以降、ケガや病気を抱えたタジキスタンの子どもたちが、治療を受けるためドイツへ来ています。2005年からは、パートナー団体„Dechkadai Sulh Derewnja Mira“と協力して行っています。2019年6月、ドイツ国際平和村スタッフは、タジキスタン各地で約200人の子どもたちとの面会を行いました。子どもたちの多くは、ひどいやけどを負っていました。しかもそれは数ヵ月、もしくは数年も経過したものでした。そのようなひどいやけどを負った原因を知ると、タジキスタンの生活環境が容易ではないことが明確になります。「特に農村部では、いまだに日干しレンガを使って自分で家を建てます。」また、料理はほとんどの場合、薪かガスオーブンを使います。このガスオーブンによる事故で、子どもたちがやけどを負うのです。「厳しい寒さをしのぐため、人々は足元を温める小さな火を食卓の下に熾していると聞いて、大変驚きました。」とタジキスタンから帰国したスタッフたちは話します。貧困が偏在し、厳しい日常生活を送っているのにも関わらず、現地の人々は常に温かく迎え入れてくれました。そして、人々の強い結びつきを幾度となく垣間見ました。「人々の結束はとても強いです。だからこそ、この国は成り立っています。わずかなものしか持っていなくても、皆、喜んで分け与えます。また、自分のできることがある時には、できる限り他の人を助けます。」とアジザ・ホーン・カシモフ医師は語りました。

子どもたちの面会には、精神障がいや身体障がいのある子どもを持つ親たちも訪れます。ドイツ国際平和村スタッフが最も心動かされたのは、ドゥシャンベでの身体障がいのある少年との出会いでした。少年は、面会中、大きな声で、「将来ドゥシャンベの動物園の園長になる!」と宣言しました。彼のひたむきさは、小さな患者たちもそれぞれ夢を持ち、生きる喜びや希望を決して失っていないということを、はっきりと示してくれました。

写真:ジャイフンでの子どもたちとの面会

「ドイツで手術を受けて子どもが元気になることをご両親は願っていますが、残念ながら私たちは全ての願いを叶えることはできません。そのため、その子には一生介助が必要なことや、この国にはそれをサポートする団体があることを現地パートナー団体のスタッフと共にご家族に説明することはとても重要です。」と、ドイツ国際平和村代表ケビン・ダールブルフは語ります。

家族が皆精一杯働かなくては生活できない家庭にとって、障がいのある子がいることは更なる負担になります。なぜなら、ドイツでは当たり前であるその子どもへの扶助や家族への支援がタジキスタンにはないからです。タジキスタン政府は、そのような支援を全く提供していません。数少ない支援プロジェクトは、外国のNGOによって行われています。視察中、ドイツ国際平和村スタッフはパンジ山岳地帯の小さな村クリャーブを訪ねました。その村では、タジキスタンの現地パートナー団体が、過去にパケットアクション(ドイツからの食糧援助)を一緒に行った団体「Sarschidabonu」と協力して活動しています。「ここを訪問した際、この団体が分かりやすい方法で、熱心に精神的、身体的障がいのある子どもたちを支援しているところを見て、とても感動しました。」とスタッフは語ります。

 

障がいを持つ子どもの出生率が高い原因の一つに、妊婦の栄養不足が挙げられます。多くの人が、予防検診や助産師が立ち合う病院での出産費用を支払う余裕がありません。それだけでなく、農村部に住む妊婦にとって、一番近くにある産院がすでに遠すぎる、ということもよくあります。それゆえ、多くの子どもは、村の助産師や集落のお年寄りの助けを借りて、自宅で生まれます。母親は、妊娠中に必要な栄養を得られないため、胎児も栄養不足のままです。ここにも貧困やそれに伴う厳しい生活環境が原因の問題があります。「多くの女性は栄養失調のため鉄分が不足しています。乳製品、魚介類、肉類はとても高価で、食卓に並ぶことは滅多にありません。その上、彼女たちは機械や工具なしで農作業をし、多世代の暮らす狭い家で家事をこなします。」アジザ・ホーン・カシモフ医師はこう話します。タジキスタンの大きな問題は、多くの男性が故郷で仕事を見つけられず、外国へ出稼ぎに行ってしまうことです。彼らの多くは、ロシアやカザフスタンで、ひどい労働条件下のもとで低賃金の仕事をしています。「ここで、更なる問題が生じます。何人もの子どもを抱え、働くチャンスのほとんどない妻たちに、外国にいる夫から急に離婚するという知らせが届くのです。」こうアジザ・ホーン・カシモフ医師は語ります。

写真:帰国した子どもたち 家族との久しぶりの再会

今回の視察で、ドイツ国際平和村スタッフは以前平和村へ治療に来ていた「かつての子どもたち」にも会う機会がありました。ニゴラもその一人です。彼女はケータリングサービスの仕事をしており、数年前から定期的にタジキスタンでの子どもの面会の手伝いをしてくれています。さらに彼女は、タジキスタンの子どものために自分で援助活動をしたいと考えています。「平和村に来ていた子どもが大人に成長し、故郷で病気やケガに苦しむ子どものことを気に留めているところを見て、とても感動しました。ニゴラは自身が受けた支援を、次の子どもたちへ届けようとしています。」と、ドイツ国際平和村スタッフのエファ・カムフーバーは報告しています。

タジキスタンでのパケットアクション

ニゴラはタジキスタンでドイツ国際平和村スタッフと会った際、「2019年はパケットアクション『Hilfe wird gepackt(支援を箱に詰めて)』が行われることをとても嬉しく思っています。パケットアクションは厳しい冬を乗りきるため、多くの人々や施設の役に立つからです。」と語りました。昨年、通関規定がより厳しくなり、ジョージアとアルメニアへパケットを送れなくなりました。もしタジキスタンだけに支援物資を送るとしたら、約80トンをタジキスタンで配布することになり、それは不可能だという結論になりました。そのため、長年続いてきたコーカサス地方と中央アジアへの物資援助は、2018年は残念ながら中止せざるをえませんでした。

ニゴラに質問 「タジキスタンの人々にとって、なぜパケットアクションはそれほど重要なのですか?」

タジキスタンでは、貧困が非常に深刻です。貧しい人々が寒さの厳しい冬を乗り越えるために、パケットアクションの食料支援はとても重要です。人々は、パケットを開けたとき、非常に喜び、たくさんの支援物資にとても感謝しています。2019年も再びパケットアクションが行われることを非常に嬉しく思っています。

「どのようなものが特に喜ばれますか?」

例えば、タジキスタンでは肉や魚はとても高価です。牛肉は1kg当たり4ユーロします。タジキスタンの家庭にとって、これはかなりの金額です。そのため、魚や肉の保存食品は大変喜ばれます。チョコレートもこの国では特別なものであり、たいていの人々にとって高すぎて手が出せないものです。その他に、歯みがき粉も喜ばれます。歯みがき粉はタジキスタンでも買えますが、残念ながらとても高価でなかなか買えないのです。

写真:クリャーブでの子どもたちとの面会

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