2023年活動報告

写真:André Hirtz
2023年活動報告

2023年、争いごとや危機的状況、災害が減ることを期待していましたが、残念ながらその傾向が見られず、気が休まらない1年となりました。深呼吸して次の活動に備えるという選択肢は、ドイツ国際平和村にはありませんでした。活動国の現地パートナー団体を通し、医療が届いていない子どもたちや家族の様子が伝わってきます。多くの場所で、子どもたちの生活環境がさらに不安定になっていることは明らかです。アンゴラ、カンボジア、中央アジアの国々では、深刻な貧困下で人々が日常生活を送ることを強いられています。ドイツ国際平和村は、このような状況下にある人々のために活動を進めました。アフガニスタンへの援助の必要性も明らかでした。飢餓による人道危機に加え、自然災害がこの国を襲いました。ドイツ国際平和村やこの活動を支える多くの方々にとって、2023年も、「継続、着目、行動」の1年となりました。

資金について

ドイツ国際平和村が援助を行動に起こせるのは、将来の資金繰りが不透明化しているにもかかわらず、多くの方々が「何かしなければ」という想いをご寄付に託してくださるおかげです。2023年は、2022年に比べると一般寄付の項目は、8,09%減少しました。2024年、活動を続けるため、多くの活動資金を必要としています。

子どもたちへの治療援助

2023年を振り返り、好ましかった出来事は、コロナ・パンデミック発生後初めて、複数国を経由する同時援助飛行をチャーター機を利用し、実施できたことです。2023年11月、ジョージア、ウズベキスタン、タジキスタン、アフガニスタンを経由し、67人の子どもたちが母国に帰国しました。その復路飛行で91人が治療のために渡独しました。ロギスティックの調整には労力がかかりますが、様々な協力関係のおかげでこの援助飛行が可能になりました。現地パートナー団体、デュッセルドルフ空港のスタッフ、子どもたちの治療にあたる協力病院のスタッフ、様々な場所で活動するボランティアの皆さんからの協力のもと、この同時援助飛行を実施できたことに感謝しています。

2023年、合計200人を超える子どもたちを8カ国からドイツへ受け入れました。そして、ほぼ同数の子どもたち(207人)が、ドイツでの治療を終え、母国で待つ家族の元へ帰っていきました。チャーター便による帰国だけでなく、路線便を利用した形でも子どもたちを母国に帰すことができました。「パンデミックを通し、より臨機応変に対応するようになりました。寄付収入状況と子どもたちにとっての最善を見極め、現地パートナー団体の力を借りながら、小グループで子どもたちの帰国を実施しました。」と、ドイツ国際平和村代表、ビルギット・シュティフターが言います。

2021年に稼働開始したメディカル・リハビリセンターの手術室で、日帰り手術が実施されています。ボランティア医師や麻酔科医師により、やけどなどによって可動域に制限がある症状を抱えた子どもたちの手術が行われ、アフターケアも含め、協力病院の負担を削減しています。2023年、手術室において、約70件の手術が実施されました。加えて、子どもたちは、ドイツ各地の病院への移動もなく、慣れた環境で手術を受けることができるようになりました。

写真:Sandro Somigli

現地プロジェクト活動

必要な手術のために、子どもたちをドイツへ受け入れることは、一時期の家族との別れを意味します。ドイツ国際平和村や現地パートナー団体は、できる限りこの別れは避けたいと考えています。そのため、数年前から、子どもたちの治療を母国で実施する「手術プロジェクト」を、アルメニア、キルギス、ウズベキスタンで資金援助しています。2023年11月からは、アフガニスタン現地においても、子どもたちに必要な手術を可能にするため手術プロジェクトを支援しています。「カブールでの面会では、重度の骨髄炎の子どもたちが多くやってきます。政権交代後、その数は増加しています。アフガニスタン現地パートナー団体である赤新月社と話し合い、カブールのクリニックでの子どもたちの手術費用を援助することに決めました。」と、シュティフターが報告します。この手術プロジェクトを11月に開始してから、2023年12月末までに約20人の子どもたちがアフガンスタンの病院で手術を受けました。近い将来に、活動国の一つであるアンゴラにおいても安全な医療環境の元、持続可能な形で手術プロジェクトを実施できるようにしたいと考えています。

カンボジアでの医療環境の充実を目指したプロジェクトも進んでいます。現在までに42軒の基礎健康診療所を建設し、医療の行き届いていない地方の人々への医療供給を充実させています。43軒目の基礎健康診療所の建設も土台の石が置かれ、本格的に始まりました。

計画していたプロジェクトと並行して、緊急支援も行いました。2023年2月、イラク・クルディスタン自治区の現地パートナー団体「Barzani Charity Foundation(バルザニ慈善団体)」から支援要請がありました。シリア・トルコ国境地帯で発生した地震の被害を受けた隣国シリアの子どもたちへ緊急支援を届けるためです。ドイツ国際平和村は、基礎食品、毛布、冬用衣類など、合計約300トンの援助物資を資金援助しました。アフガニスタン・ヘラート州で発生した地震の被害を受けた地域には、医療品や医薬品(ヘルス・キット)を現地パートナーを通し、迅速に届けました。パキスタンのキャンプに逃れていたアフガニスタン難民が母国に強制送還されるという事態にも対応し、医薬品、栄養食品、おむつなどを人々に届けました。一時的なテントで生活し、劣悪な環境下に置かれている子どもたちがいます。この援助物資は、国境の町トールハムとカンダハールにて人々の医療環境の改善のために活動している現地パートナー団体「赤新月社」が分配しました。「現地パートナー団体とともに、多くの困窮した家族に支援を届け、同時に希望も届けることができました。大きな制限なしに現地プロジェクト活動を進められたことはありがたいことです。」と、シュティフターがまとめます。

ドイツ国際平和村・平和教育部門

人々の人道援助への意識や社会参加を促し、全ての人々の平和的な共生に寄与するという目的を達成するために活動している平和教育部門にとって、2023年は様々な形で良い成果を収めました。

ドイツ国際平和村・平和教育部門の開催する「出会いの場」におけるプログラムには、2023年、67グループ(1431人)が参加し、活動紹介などを開催できました。加えて、平和教育を、他のアクションやプロジェクトを通して進めることもできました。例えば、学校機関では、「平和のハト」をシンボルに生徒の皆さんと、「平和」の意味を深められるような活動を行いました。この「平和のハト」プロジェクトは、2024年も企画されています。

2年に1度のYouth4peace(青少年平和賞)を開催し、9月に第4回目の授賞式も行いました。この賞には、日本からも応募があり、日本の2団体、1個人がそれぞれの部門で最優秀賞を受賞しました。多くの応募内容は、青少年が平和という概念をどのように解釈するかについて、様々な創造的アプローチを示していました。

他の団体と協力して行ったイベントやワークショップもあります。例えば、「ポジティブ・ジャーナリズム」をテーマにしたオンラインイベントでは、参加者に様々な角度から、「平和」というテーマについて新たな視点をもたらしました。地域レベルや世界レベルでの共存について、より広い視野を得ることができました。通年の共催イベントである世界こどもの日イベントや、オーバーハウゼン市における広島長崎原爆被災者追悼イベントへ、2023年も参加しました。他には、地域の子どもたちの参加型イベントにおいて、「サステナビリティ」に重点を置いたスタンドを準備し、このテーマを身近に感じてもらうことができました。

家族・生涯学習講座の各種セミナーは、142講座を開催でき、1597人の参加者がありました。2024年も、オンラインまたは対面での様々な講座が企画されています。

2024年の予定

子どもたちの治療援助の分野では、5月にアンゴラへの援助飛行を、11月にアフガニスタンとその周辺国への援助飛行を予定しています。治療援助を必要としている子どもたちは増加している一方で、パンデミック以前のような年4回のチャーター便による援助ではなく、2回のチャーター便というのは、ドイツ国際平和村にとっては苦い決断です。「感情的に言えば、チャーター便を1年に10機飛ばし、子どもたちで満席にして援助飛行を行い、一人でも多くの子どもたちに治療の機会を提供したいです。ただ、私たちの活動には限界があります。私たちにとっての最優先事項は、子どもたちとその家族に対し責任を持った対応をすることです。治療援助が可能である範囲内で子どもたちをドイツに受け入れます。」とシュティフターは言います。ドイツ国際平和村の治療援助活動は、依然として、協力病院を取り巻く環境に影響します。現在、特に外傷外科、整形外科、泌尿器科における治療受け入れ先を探しています。

現地プロジェクトにおいては、アルメニア、ガンビア、イラク、カンボジア、キルギス、タジキスタン、ウズベキスタンでの活動を引き続き行っていきます。市民が基礎食品を詰めたパケット(小包)をタジキスタンの困窮した家族へ届けるパケットアクションは、ロジスティックや費用面からドイツから送ることを中止しましたが、現地の人々へ以前のようにパケットが届くよう、他の方法で支援を続けています。それは、小麦粉、お米、砂糖、お茶、油、石鹸などを現地で購入し、現地パートナー団体が分配するという方法です。タジキスタンには、介護が必要な子どもたちを世話するシングルマザーが多くいます。彼女たちの多くは収入源がなく、生活していくことが大変です。この食糧支援活動は、国内における仕事を産出し、サスティナブルにこの国を支えることができます。「この食糧支援物資活動は、この上なく必要とされています。」と、2022年と2023年の物資援助に付き添ったクラウディア・ペップミュラーが強調します。人々が厳しい冬を越えられるようにと実施していた食糧支援活動を2024年は9月に開始する予定です。「冬に向けてさらに食糧価格が高騰する前に、食糧の購入と分配を行おうと、現地パートナーと打合せをしています。」と説明します。

2023年、多くの方からのご支援のおかげで、多くの活動を遂行することができました。2024年も多くの方々のご支援とともに、援助の道を進んでいけますよう願っています。

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