レポートテーマ:手術室を備えたメディカル・リハビリセンターの新設

危機的状況にある子どもたちへの治療提供

ドイツ国際平和村施設内に新設された建物は、オーバーハウゼン市にある「Rua Hiroshima(ルア・ヒロシマ、ヒロシマ通り)」を入るとすぐに見えてきます。施設の中心にあるこの大きな建物は、施設内にある他の建物と同じスタイル・色彩に合わせました。ドイツ国際平和村の歴史の1ページになるであろう出来事がこの建物内で行われました。新設されたこのメディカル・リハビリセンターの1階には手術室が備えられ、ここで、2021年7月から、子どもたちが手術を受けられるようになりました。2階には、処置室とリハビリ室があり、子どもたちは包帯替えやリハビリを行っています。

工事が実際に始まってから約3年後の2021年7月24日、ようやく第1回目の手術が実施されました。ウズベキスタンからやってきた男の子、サンジャベックにとって、緊張感で始まった一日でした。サンジャベックは、母国で重度のやけどを負い、右手の可動域が大きく制限されていました。この日、彼は果敢にこの建物に入り、麻酔科医師と麻酔科の看護師は、手術の準備が整えました。麻酔後、無菌状態に保たれた手術室に入り、手の専門医のグルンヴァルト外科医と手術チームが、彼が再び指を動かせるように右手のひきつれを解しました。

「無事に手術を終えることができました。手術チームの皆が一丸となり、第1回目の手術を成功させることができました。今後より多くの子どもたちに、平和村での治療を進められることを願っています。」と、グルンヴァルド医師が語りました。また、ドイツ国際平和村スタッフで手術室を担当しているヤスミン・ブルンチが、「この手術プロジェクトが進んでいることを嬉しく思います。手術室用の照明、手術台、器械台など、多くの必要器機をご寄付いただけました。手術中にあらゆる角度からレントゲン撮影ができるCアームもご寄付によるものです。」と説明しました。

手術の数日後、グルンヴァルド医師が手術経過を確認しました。

サンジャベックが麻酔から回復した時、彼の手にはしっかりと包帯がまかれていました。これからは、リハビリセンター内の処置室担当スタッフが傷のチェックを行います。また、リハビリも必要です。傷の回復、そして指と手の可動域の再生のために、帰国の日まで、彼はアフターケアとリハビリの日々を過ごします。

2021年、リハビリセンターも、この新しい建物に移動しました。以前のリハビリセンターは、施設下部にあり、子どもたちは施設上部から下部への道を往復しなければなりませんでした。特に車いすを使用している子どもたちにとって、坂の往復移動は大変なことでした。新しいリハビリセンターは、施設上部に建設されたので、リハビリセンターへの移動もだいぶ楽になりました。リハビリセンターは、新しい建物の2階にありますが、階段の乗降が難しい子どもたちは、エレベーターを使用します。また、このフロアの中心には、待合室があります。待合室の壁にはカラフルな絵が描かれ、子どもたちはここで遊んだり、絵を描いたりしながら、順番を待ちます。名前を呼ばれた子どもは、処置室かリハビリ室へ向かいます。処置室では、傷の回復状況をチェックし、包帯を替えます。リハビリ室では、子どもたちそれぞれに必要な運動療法が施されます。子どもたちはこのリハビリ室が大好きです。簡単な器具を使い、楽しみながらリハビリ・トレーニングができるからです。

新設のきっかけ

手術室を備えたメディカル・リハビリセンター建設のきっかけは、2004年にドイツの医療業界に、新たなシステムが導入されたことと関係します。2004年以降、医療保健システムが新たな方向に向かい始めました。この新しい病院報酬システムでは、患者の入院滞在日数が重要ではなく、診断内容自体で報酬が左右されるようになりました。「病院は赤字にならないように気を遣うようになりました。また、病院の統合や専門化の進行に加え、人員不足や厳格化された衛生措置の保持といった新たな課題に向き合っています。そのような状況下で、ドイツ国際平和村は、子どもたちの治療を無償で行ってくれるよう病院と交渉しなければなりません。無償での治療を引き受ける病院が減少することは残念ながら明らかでした。」と、ドイツ国際平和村代表、ビルギット・シュティフターが語ります。

病院からの協力は、子どもたちへ治療援助活動に必須です。協力を継続してもらうためにも病院の負担を少しでも減らしたいと考えました。これが、病院との新たな協力関係を築くアイデアにつながりました。想像してみてください。ある女の子が骨髄炎を抱えてドイツにやってきました。手術が必要です。大きな手術は、術後のケアが可能な設備が整っている病院で受けます。その手術で埋め込まれた補強のためのプレートを取り除く後続の手術は、ドイツ国際平和村の活動に協力してくれているボランティア医師が、平和村手術室で行います。ドイツ国際平和村で手術ができることにより、協力病院の人的、資金的な負担を軽減させることができます。その他、簡易的な整形外科や手専門の外科手術が、平和村手術室で可能です。例えば、サンジャベックのような拘縮の緩和、創外固定具の取り外しや、体内に埋め込んだプレート、ボルトを取り出す手術です。この協力関係は、子どもたちにとってもメリットがあります。慣れ親しんだ環境で、手術を受けられます。サンジャベックの手術中、彼の友達は、好奇心いっぱいに手術が終わるのを待っていました。サンジャベックは、手術後、回復室で数時間滞在し、すぐに友達と会え、ほっとした様子でした。

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