援助物資の輸送と緊急支援
たとえ「焼け石に水」のように見えたとしても
もしも、麻酔薬や縫合のための器具、包帯がなかったら、どうやって手術をしたらよいのでしょう?もしも、抗生物質や鎮痛剤、下痢止めなどが全く手に入らなかったり、たとえ手に入ったとしても、貧しい人々にとっては、とても手に届くような金額ではなかったりしたら、どうしたらよいのでしょう?ドイツ国際平和村が支援に取り組んでいる国々では、こうした、基本的な医療処置を行うために最低限必要なものすら不足していることもしばしばです。平和村のスタッフが現地へ入った際には、開いたままの傷口に古く汚れた布が当てられているだけという状態の子どもたちを目にすることも珍しくはありません。そこには十分な包帯すらないのです。
そこで、ドイツ国際平和村では、子どもたちの母国にあるパートナー団体へ、定期的に様々な援助物資を届けています。2015年の一年間だけでも、114トンの援助物資が現地へと届けられました。医療機器やその他の機器、包帯類、整形外科用品、医薬品、衣類など、物資の内容は現地の需要に基づき多岐に渡ります。その中でも特に喜ばれているのが、発泡性のアイソトニック栄養補助剤です。ドイツ国際平和村の活動のためにこの栄養補助剤は製造され、現地の人々の栄養不良や下痢などへの対策として用いられています。毎年、錠剤の入った筒30,000本が世界各地へと送られ、現地のパートナー団体により、それを必要としている人々へと届けられています。
現地からの要請で、輸送車を届けたこともありました。それらはスリランカやルーマニアでスクールバスとして使用され、そのことにより、僻地に暮らす子どもたちが学校に通えるようになりました。ガンビアへ届けられたトラクターは、現地の農業従事者の重労働を助けるために使用されています。
緊急支援の分野に関しては、ロジスティクの問題から、ドイツ国際平和村が支援を実施できる機会は限られてしまいます。現地に信頼のおけるパートナーがいて、そのパートナーを通して現地での受領・輸送手段が確保できていることや、支援物資の分配をきちんと行えること、また、その確認ができることなどが条件となります。2014年、中東のガザで紛争が勃発した際には、現地パレスチナのプロジェクトパートナーの力を借り、WHOの基準に則ったEmergency Health Kit’s(医療緊急物資)2セットを現地へと届けることができました。
また、2004年12月に発生したスリランカ津波災害の際には、災害発生直後に3機の輸送機で210トンを超える緊急支援物資をスリランカへと送り、それらの物資は現地のパートナー団体により、被害がとりわけ大きく、そして支援の手が届きにくかった北部や北東部へと届けられました。
こうした支援は、もしかすると「焼け石に水」のように思われるかもしれません。しかし、例えば、援助物資の中にあった一台の車椅子によって、タジキスタンの山間部に暮らす一人の少女の行動範囲は大きく広がり、それにより様々な新たな体験が可能になりました。この少女にとって、この一台の車椅子という贈り物はかけがえのないものなのです。
ドイツ市民によるパケットアクション
飢えることなく冬を乗り越えるために
9月、ドイツ国際平和村のお祭りの開催とともに、毎年、ドイツ市民によるパケットアクションが始まります。20年以上に渡り、基礎食品の詰まったこのパケット(段ボール箱)は、ジョージア、アルメニア、ナゴルノ・カラバフに暮らす貧しい人々の助けとなってきました。また、2007年からは、冬の寒さの厳しいタジキスタンにもこのパケットが届けられています。このパケットアクションでは、ドイツの一般市民が、若者たちのグループが、あるいは学校のクラス単位で、規定のパケット(段ボール箱)を買い求め、そこに、日持ちする食料品や暖かい衣類などを詰めていきます。
その後、ドイツ国際平和村へと集められたパケットは上記の国々へと運ばれ、そこでそれぞれの現地パートナー団体によって、困窮している人々や病院、孤児院などへと届けられます。このパケットアクションは、ドイツと現地の両サイドにおける、各地での輸送の連携によって成り立っています。まずは一つひとつのパケットがドイツ各地にある集積場へと届けられ、その後、ドイツ国際平和村へと運ばれます。そうして年末にはパケットを各国へと届けることができるようになります。
各国に届いた後、パケットは再び小さな単位に分けられ、緊急性などに応じて、支援を必要としている人々の元へと届けられていきます。届けられたパケットの中には、その家族には不要なものが入っている場合もありますが、その際には現地の人々の間で物々交換が行われ、それがとてもよく機能しています。こうした物々交換なども経て、たった一箱のパケットが、一家族全員が厳しい冬の数週間を過ごすための助けとなるのです。
このアクションにおいても、その実施にあたり欠かせない条件があります。それは、現地パートナー団体との信頼関係と協力です。それぞれの国のパートナー団体は、現地の社会的な構造を熟知しており、独自のネットワークを持っています。それにより、活動の継続と効果的な配分が可能となるのです。一方で、大変残念なことに、新たな厳しい通関規定のために、2017年はこのパケットをジョージアの困窮家庭へと届けることができませんでした。パケットアクションをはじめとしたドイツ国際平和村の活動については、ドイツ国際平和村ニュースに随時報告しています。
ドイツ国際平和村ニュース
「2019年のパケットアクションが終了しました」(2019年12月27日投稿)
「今年のパケットアクションではドイツ国際平和村の子どもたちの支援を行います」(2018年9月10日投稿)

ドイツ国際平和村のタジキスタンでの活動報告(2019年10月発行)は、こちらから。
補足:ドイツ国際平和村のパートナー団体は、それぞれの国において中立を保っています。
現地においてドイツ国際平和村の支援のもと新たな団体が設立されるのは、そこに、すでに存在している団体による適切な活動基盤がなかった場合に限ります。ドイツ国際平和村のパートナー団体は大小様々であり、カブールのアフガニスタン赤新月社のような大きな独立団体もあれば、アルメニア子ども基金のような数人のスタッフによる団体もあります。
効率の良い支援を
ドイツ国際平和村が取り組むプロジェクトの中には、他の人道援助団体や支援者と協力して取り組んでいるものもありますが、こうしたプロジェクトの費用は基本的に寄付金によって賄われています。そしてそれを支える大きな力となっているのが、ドイツ国際平和村共同基金です。2004年以来、160万ユーロを超えるプロジェクト費用がこの基金から拠出されました。また、いくつかのプロジェクトについてはその資金面において、例えばゾーリンゲン市の市民たちといった外部の支援者によって支えられています。こうしたプロジェクトの提案や実行において大切となるのが、その継続性、持続性、そして現地における実際の需要です。さらに、現地パートナーの視点から見れば、杓子定規ではない迅速な対応も重要です。
また、例えばアフガニスタンといった国々の現地の人々の生活状況を劇的に変えるために、多くのお金が必要だとは限りません。もし、近隣の井戸から突然、飲料水として使用可能な水が湧き出したとしたら、時に5~6歳の子どもたちも含め、その地域に暮らす人々は、悪天候の中、山道を上り下りし、何キロも離れた井戸や川まで重たい容器を抱えて歩いて行かなくてすむようになるのです。
基礎健康診療所のように、資格を持った助産師立ち合いの下で出産が行われるようになれば、出産の際のリスクを減らすことができますし、その結果、子どもたちも誕生直後から健康な生活を送ることができます。明確な目的に沿った予防接種プログラムは、ドイツ国際平和村が支援に取り組んでいる国々においては重度の後遺症を残しかねない様々な病気の発生を防ぎます。
たとえ、わずかな資金であっても、効率良く、持続的に現地の人々の生活状況を改善していくことができるはずです。このような想いのもと、ドイツ国際平和村は今後も、現地パートナー団体と協力し、プロジェクト活動を進め、広げていきたいと考えています。
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